ステーブルコイン社会実装促進事業補助金の申請方法

ステーブルコイン社会実装促進事業補助金の申請手順

この記事は、東京都のステーブルコイン社会実装促進事業補助金を申請する事業者が、申請書類を作成し、提出し、交付決定後に事業を実施し、実績報告と請求まで進めるための実務記事です。

この補助金は審査制です。

申請すれば必ず交付される制度ではありません。

交付決定前の契約、発注、支払、開発着手は禁止です。

補助金は後払いです。

領収書、契約書、請求書、振込明細、納品書、成果が分かる資料は保管します。

現場で起きる3つの悩み

  • どの経費が補助対象になるのか判断できない。
  • 実施計画書に何を書けば審査で伝わるのか分からない。
  • 交付決定前にベンダーと契約してよいのか不安になる。

結論

申請の中心は、国内発行の日本円建てステーブルコインを使い、都民又は都内事業者の課題を解決するユースケースを具体化することです。

事業目的、利用者、実施場所、法令遵守、リスク管理、外部事業者の役割、支払証拠を一つの流れで説明します。

採択後は、交付決定日以降に契約し、令和9年3月31日までに実装又は検証、支払、実績報告を完了させます。

制度概要

項目 内容
対象事業 実発行された国内の日本円建てステーブルコインを活用し、ユースケースを創出する取組
対象地域 実装又は検証を行う地域に都内を含める
対象外 国内でステーブルコインを発行する事業そのもの
補助率 補助対象経費の3分の2以内
補助上限額 1件あたり4,000万円
募集期間 令和8年4月17日から令和8年6月30日まで
補助対象期間 交付決定日から令和9年3月31日まで
支払方法 事業完了後の精算払い

申請前の準備物

準備物 作成者 確認すること
交付申請書 申請者 経費区分ごとの補助金申請額を記載する
事業概要書 申請者 住所、会社名、代表者、事業内容、資本金、設立時期、従業員数、直近2期の業績を記載する
実施計画書 申請者 目的、事業計画、事業スキームを具体的に記載する
誓約書 申請者 反社会的勢力に該当しないことを誓約する
履歴事項全部証明書等 法務局等 所在地と代表者を確認できる資料を用意する
印鑑証明書等 法務局等 申請者が使用する印鑑の真正性を確認できる資料を用意する
見積書等 外部事業者 補助申請額の根拠を示す
詳細な事業内容が分かる資料 申請者 事業概要書に添付する
詳細な計画内容が分かる資料 申請者 実施計画書に添付する

補助対象経費の判断

外部基盤利用経費

外部基盤利用経費は、ステーブルコイン発行を外部基盤提供事業者に委託する際のプラットフォーム利用料、ウォレット利用料、ブロックチェーン利用料、ノード運用費などです。

ステーブルコインの裏付資産として拠出する資金は対象外です。

専門家への相談及び監査等に伴い発生する経費

法務、許認可、税務、情報セキュリティ、システム上の安全性確保のための監査、診断、評価、助言に要する費用です。

弁護士、行政書士、税理士等への相談費用は、補助対象事業の実施に必要な内容に限定します。

システム開発経費

システム開発経費は、仕様書で実施内容を具体的に指示できる外部委託費です。

利用者に高い付加価値を創出する開発に限ります。

税抜100万円以上の経費は、原則として2社以上の見積書を取得します。

第三者への再委託費、関連会社への支払、技術開発要素を伴わないデザインや翻訳、人材派遣、未使用部分、成果物の所有権又は著作権が申請者に帰属しない開発は対象外です。

交付申請書の書き方

押すボタン名

  • 電子申請の場合は、Jグランツで対象補助金の申請画面を開きます。
  • 申請内容を入力したら、一時保存を押します。
  • 添付書類を登録したら、申請するを押します。
  • 郵送の場合は、簡易書留など追跡できる方法で送ります。
  • 持込の場合は、東京都庁第一本庁舎20階の国際金融都市推進課へ提出します。

入力項目と入力例

入力項目 入力例 注意点
住所 東京都千代田区丸の内一丁目1番1号 登記簿上の本店又は支店と一致させる
会社名 株式会社〇〇 履歴事項全部証明書と同じ表記にする
代表者 代表取締役 〇〇 〇〇 役職名まで記載する
外部基盤利用経費 6,666,000円 対象経費1,000万円の3分の2を計算し、1千円未満を切り捨てる
専門家への相談及び監査等に伴い発生する経費 2,000,000円 対象経費300万円の3分の2を記載する
システム開発経費 20,000,000円 対象経費3,000万円の3分の2を記載する
合計申請額 28,666,000円 区分ごとの合計額と4,000万円の小さい方を記載する
申請額内訳 外部基盤利用料10,000,000円×2分の3ではなく、10,000,000円×3分の2=6,666,666円、1千円未満切捨て、6,666,000円 計算式を必ず書く

空欄でよい箇所

  • 該当しない経費区分は空欄ではなく、0円又は対象外と分かる記載にします。
  • 申請額内訳は空欄にしません。
  • 日付は提出日を記載します。
  • 代表者欄は空欄にしません。

押してはいけないボタン

  • 添付書類が未登録の状態で申請するを押してはいけません。
  • 見積書の金額と申請書の金額が一致していない状態で申請するを押してはいけません。
  • 交付申請後に事業を取り下げる意思がないのに撤回手続を進めてはいけません。
  • 交付決定前にベンダーへの発注ボタン、契約締結ボタン、支払ボタンを押してはいけません。

事業概要書の書き方

項目 入力例 詰まりやすい箇所
事業内容 法人向け越境取引における円建てステーブルコイン決済の実証及び決済管理システムの提供 会社全体の紹介だけで終わらせない
資本金 50百万円 円単位ではなく百万円単位で記載する
設立時期 令和2年4月 西暦ではなく和暦で記載する
全従業員数 35名 役員だけを記載しない
直近2期の業績 令和7年3月期 売上高300百万円 営業利益20百万円 経常利益18百万円 決算書と一致させる

実施計画書の書き方

事業の目的

事業の目的には、社会課題、現状の課題、提供できる付加価値、事業実施後の展望、市場全体への波及効果を書きます。

入力例

本事業は、都内中小事業者が海外取引時に負担している送金手数料、着金確認の遅延、入金消込作業の負荷を解決するため、国内発行の日本円建てステーブルコインを用いた企業間決済ユースケースを創出する。利用者は都内の輸出入関連事業者とし、決済履歴を管理画面で確認できる仕組みを提供する。事業実施後は、取引先拡大、会計処理連携、監査証跡管理の標準化により、円建てデジタル決済の利用機会を増やす。

事業計画

事業計画には、活用するステーブルコインの種類、利用者、実施場所、法令遵守、リスク管理体制、スケジュールを書きます。

入力例

活用するステーブルコインは、国内で発行された日本円建てステーブルコインとする。利用者は都内に本店又は支店を持つ法人とする。実施場所は東京都内の事業拠点及び利用法人の管理部門とする。法令遵守体制は、社内責任者、外部弁護士、システム監査担当で構成する。リスク管理体制は、取引上限、権限管理、ログ保存、障害時連絡手順、利用者説明資料の整備により運用する。令和8年8月に要件定義、令和8年10月に開発、令和8年12月に検証、令和9年2月に実装又は検証完了、令和9年3月に実績報告を行う。

事業スキーム

事業スキームには、申請者、外部基盤提供事業者、開発会社、専門家、利用者の役割を分けて書きます。

入力例

申請者は、事業全体の企画、利用者募集、運用管理、成果確認を担当する。外部基盤提供事業者は、ステーブルコインの発行委託に係る基盤提供、ウォレット利用、ブロックチェーン利用環境の提供を担当する。開発会社は、決済管理画面、取引履歴確認機能、権限管理機能、証跡出力機能の開発を担当する。専門家は、関係法令、許認可、税務、情報セキュリティの確認を担当する。利用者は、実装又は検証期間中に決済操作、入金確認、管理画面利用を行い、利用結果を申請者へ報告する。

申請から入金までの流れ

段階 やること 禁止事項
申請 交付申請書、事業概要書、実施計画書、誓約書、確認資料、見積書を提出する 金額根拠がないまま提出しない
審査 審査会で特に優れた案件が選定される 採択前に契約しない
交付決定 交付決定通知書を確認する 交付決定額を満額入金保証と考えない
事業実施 交付決定日以降に契約、利用、サービス提供、支払を行う 対象外事業と混同して支払わない
変更 内容変更や経費配分変更は事前に都へ報告する 承認前に変更契約を締結しない
実績報告 第10号様式、付表、証拠書類、実装又は検証実績資料を提出する 令和9年3月31日を過ぎて支払未完了にしない
検査 現場確認、証拠書類の原本照合に対応する 原本を破棄しない
額の確定 交付額確定通知を確認する 交付決定額と確定額を混同しない
請求 第12号様式に請求金額と振込先を記載する 消費税及び地方消費税相当額を含めない

差し戻し対策

差し戻し原因 対策
ステーブルコインの種類が不明 国内発行の日本円建てステーブルコインを活用することを明記する
都内との関係が不明 都内の利用者、実施場所、都内事業者の課題を記載する
発行事業そのものに見える 発行ではなく、実発行されたステーブルコインを使うユースケース創出であると書く
金額の計算式がない 対象経費、補助率、端数切捨て後の申請額を区分ごとに書く
見積書の内訳が粗い 機能、作業項目、単価、数量、期間を記載した見積書を添付する
法令遵守体制が抽象的 責任者、確認者、外部専門家、確認頻度を記載する
リスク管理が弱い 権限管理、ログ保存、障害時対応、利用者説明、監査証跡を記載する
成果物の帰属が不明 システム成果物の所有権又は著作権が申請者に帰属する契約内容にする
実施期間が間に合わない 令和9年3月31日までに実装又は検証、支払、報告が終わる工程にする

エラー対策

添付ファイルの内容不一致

原因は、申請書の金額、見積書の金額、内訳資料の金額が一致していないことです。

対策は、外部基盤利用経費、専門家費用、システム開発経費ごとに見積書を分け、申請書の区分と同じ名称にすることです。

証明書の期限切れ

原因は、履歴事項全部証明書や印鑑証明書が古いことです。

対策は、受付時点で発行から3か月以内の資料を用意することです。

交付決定前着手

原因は、申請後すぐにベンダーへ発注してしまうことです。

対策は、交付決定通知書の日付を確認してから契約、発注、支払を行うことです。

支払証拠不足

原因は、請求書だけで支払完了を示そうとすることです。

対策は、請求書、領収書、金融機関の振込明細、預金通帳、元帳をそろえることです。

実績報告の成果不足

原因は、開発した事実だけを書き、ユースケースを実装又は検証した実績を示していないことです。

対策は、利用者数、利用期間、取引件数、画面キャプチャ、検証結果、課題、今後の展開を整理することです。

加点につながる工夫

実施計画書では、決済手数料削減だけでなく、都内事業者の入金確認時間を短縮する業務効果を数値で書きます。

入力例は、現状は海外送金後の着金確認に平均3営業日を要しているが、本事業では円建てステーブルコイン決済の検証により、決済履歴確認を同日中に行える状態を目指す、です。

この書き方により、社会課題、利用者の便益、決済・送金の利便性向上、市場への波及効果が一つの文章で伝わります。

実績報告で集める証拠書類

経費区分 必要資料 実務上の注意
外部基盤利用経費 利用料、利用期間、支払条件が分かる資料、契約書、請求書、領収書等 利用期間が補助対象期間内であることを確認する
専門家費用 依頼内容、請求金額、支払条件が分かる資料、請求書、領収書、振込明細等 一般相談ではなく補助対象事業との関係を明確にする
システム開発経費 委託契約書、仕様書、納品書、請求書、領収書等 成果物の所有権又は著作権の帰属を確認する
実装又は検証実績 画面、ログ、検証結果、利用者報告、写真、成果資料 実際にユースケースを創出したことを示す

請求書の書き方

請求は、交付額確定通知を受けた後に行います。

第12号様式には、補助対象事業者名、請求金額、金融機関名、支店名、預金種別、口座番号、振込先名を記載します。

請求金額には、消費税及び地方消費税相当額を含めません。

実務ミスを防ぐ最終確認

  • 交付決定前に契約していない。
  • 交付決定前に支払っていない。
  • 対象経費は3区分のいずれかに整理している。
  • 消費税及び地方消費税相当額を除いている。
  • 令和9年3月31日までに支払が完了する。
  • 見積書、契約書、仕様書、納品書、請求書、振込明細、通帳、元帳を保管している。
  • 変更が出た場合は事前に都へ報告する。
  • 補助対象事業以外の費用と混同して支払っていない。
  • 実装又は検証の成果資料を残している。

まとめ

ステーブルコイン社会実装促進事業補助金は、円建てステーブルコインのユースケースを東京都内で創出する事業者向けの補助金です。

審査制であり、交付決定前の着手は禁止です。

補助金は後払いです。

申請は、事業目的、法令遵守、リスク管理、事業スキーム、経費根拠、証拠書類の整合性で決まります。

まずは自社で、対象事業、対象経費、スケジュール、証拠書類を整理します。

判断に迷う経費、ステーブルコインの法令整理、システム開発契約、実績報告の証拠設計は、申請前に専門家へ相談します。

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