Google Workspaceは便利ですが、利用者ごとにライセンス費用がかかります。
「GmailやGoogleカレンダーを使いたい人は2名だけ。ほかのスタッフや共有アドレスは、レンタルサーバーのメールで十分」という会社も少なくありません。
そこで本記事では、同じ独自ドメインのまま、必要なメールアドレスだけGoogle Workspaceを使い、残りをシンレンタルサーバーで受信する方法を解説します。
この記事の結論
Google Workspaceの「分割配信(split delivery)」と、Google Workspace専用のサブドメインを組み合わせます。
ただし、メールが届かなくなるリスクがあるため、現在の設定を控え、テスト用アドレスで確認しながら切り替えてください。
この記事で実現するメール構成
例として、独自ドメインを「wgconsulting.net」とし、次の3つのメールアドレスを使うものとします。
| メールアドレス | 受信場所 | 用途 |
|---|---|---|
| A@wgconsulting.net | Google Workspace | GmailやGoogleカレンダーを使う担当者 |
| B@wgconsulting.net | シンレンタルサーバー | 通常のメール送受信だけを行う担当者 |
| support@wgconsulting.net | シンレンタルサーバー | 問い合わせ受付などの共有アドレス |
受信時に相手へ見せるメールアドレスは、どちらも「@wgconsulting.net」のままです。Google Workspace利用者だけ、内部の転送経路として「gw.wgconsulting.net」というサブドメインを使います。
まず理解したい全体の流れ
wgconsulting.netのMXレコードは、Google Workspaceに向けます。したがって、外部から届くメールは、宛先がAでもBでも、最初にGoogle Workspaceへ到着します。
| 送信パターン | 配送経路 | 最終的な受信場所 |
|---|---|---|
| 外部 → A | 外部 → Google Workspace | AのGmail |
| 外部 → B | 外部 → Google Workspace → シンレンタルサーバー | Bのサーバーメール |
| B → A | シンレンタルサーバー内のA → A@gw.wgconsulting.net → Google Workspace | AのGmail |
| A → B | Google Workspace → シンレンタルサーバー | Bのサーバーメール |
ポイントは、外部からの受信だけでなく、AとBの間で相互に送信できる経路まで作ることです。
なぜMXレコードを変更するだけでは足りないのか
問題1:Google Workspaceに存在しない宛先は受信できない
MXレコードをGoogle Workspaceへ向けると、外部からwgconsulting.net宛に届くメールは、すべてGoogle Workspaceへ入ります。
AはGoogle Workspace上に存在するため、そのままGmailで受信できます。一方、BをGoogle Workspaceに作っていない場合、通常は「存在しない宛先」と判断されます。
この問題は、Google Workspaceの分割配信で解決します。Google Workspaceに存在しない宛先だけを、シンレンタルサーバーへ配送します。
問題2:シンレンタルサーバー内では同じドメインがローカル配送される
BからAへ送信すると、シンレンタルサーバーは「Aも自分が管理しているwgconsulting.netのアドレス」と判断します。そのため、外部のMXレコードを参照せず、サーバー内で配送しようとします。これがローカル配送です。
この状態でシンレンタルサーバー側のAを削除しても、自動的にGoogle Workspaceへ送られるとは限りません。宛先不明としてエラーになる可能性があります。
重要
シンレンタルサーバー側のA@wgconsulting.netは削除せず、ローカル配送されたメールの受け皿として残します。
受け取ったメールをA@gw.wgconsulting.netへ転送し、Google Workspaceへ届けます。
この方法で費用を抑えられる理由
シンレンタルサーバーでは、契約中のサーバーにメールアカウントを追加しても、通常はアカウントごとのGoogle Workspaceライセンスは発生しません。
そのため、Google Workspaceの機能が不要な担当者や共有アドレスをシンレンタルサーバー側に残せば、契約するGoogle Workspaceユーザー数を減らせます。
| 受信場所 | 向いている用途 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| Google Workspace | 個人用の業務アカウント | Gmail、カレンダー、Meet、Driveなどを利用できる |
| シンレンタルサーバー | 通常のメール、通知用・共有用アドレス | メールソフトやWebメールで送受信する |
たとえば、Google Workspaceが不要なアドレスを5件サーバー側に残した場合、削減額の目安は「Google Workspaceの1ユーザー当たり年間料金 × 5件」です。
Google Workspaceの料金は、プラン、年契約・月契約、契約先、キャンペーン、税区分などで変わります。記事内に固定料金を書く場合は、掲載時点と契約条件を併記し、定期的に見直してください。
設定前に必ず確認すること
設定変更を始める前に、次の情報を一覧にしてください。メールアドレスを1件でも見落とすと、そのアドレスだけ受信できない状態になることがあります。
- 現在使用しているすべてのメールアドレス
- Google Workspaceで受信するアドレス
- シンレンタルサーバーで受信するアドレス
- 問い合わせ、請求、採用、通知用などの共有アドレス
- 複合機、Webフォーム、会計ソフトなどが送信に使うアドレス
- 現在のMX、SPF、DKIM、DMARCレコード
- 各メールアドレスの転送設定
あわせて、Google Workspace管理者アカウント、DNS管理画面、シンレンタルサーバー管理画面、社外のテスト送信用メールアドレスを用意します。
作業前の安全対策
現在のDNS設定とメール設定を、スクリーンショットまたはテキストで保存してください。いきなり本番アドレスを削除せず、少数のテストアドレスから切り替えます。
設定手順
手順1:メールアドレスを2つのグループに分ける
まず、各メールアドレスの受信場所を決めます。
| 区分 | 例 | 必要な設定 |
|---|---|---|
| Google Workspace利用者 | A@wgconsulting.net | Google Workspaceのユーザーを作成する |
| サーバーメール利用者 | B@wgconsulting.net、support@wgconsulting.net | シンレンタルサーバーにメールアカウントを作成する |
手順2:シンレンタルサーバーをGoogle Workspaceの配送先として登録する
Google管理コンソールで、シンレンタルサーバーの受信用メールサーバーを配送先ホストとして登録します。
一般的には、Google管理コンソールの「アプリ」→「Google Workspace」→「Gmail」→「ホスト」から追加します。管理画面の名称は変更されることがあるため、表示が異なる場合はGoogle公式ヘルプの「分割配信」を確認してください。
配送先には、シンレンタルサーバーの受信用ホスト名を指定します。推測で入力せず、サーバー管理画面またはサポート案内で確認してください。
手順3:Google Workspaceで分割配信を設定する
Google Workspaceに存在しないwgconsulting.net宛メールを、手順2で登録したシンレンタルサーバーへ配送します。
| 確認項目 | 設定の考え方 |
|---|---|
| 対象メール | 外部からの受信に加え、Google Workspace利用者から同一ドメイン宛に送るメールも対象にする |
| 対象受信者 | Google Workspaceで認識されない受信者のみ |
| 配送先 | 手順2で登録したシンレンタルサーバー |
AはGoogle Workspaceで認識されるためGmailへ、Bとsupportは認識されないためシンレンタルサーバーへ配送される構成にします。
「存在するGoogle Workspaceユーザーまでサーバーへ送る」設定にすると、二重配送や意図しない経路になる可能性があります。認識されない受信者だけを対象にしてください。
手順4:Google Workspace専用サブドメインを追加する
次に、Google Workspaceへ戻すための専用経路として「gw.wgconsulting.net」を用意します。
Google Workspaceでは、gw.wgconsulting.netをユーザーエイリアスドメインとして追加する方法が分かりやすいです。この方法では、既存ユーザーAにA@gw.wgconsulting.netという別名アドレスが自動的に割り当てられます。
gw.wgconsulting.netの所有権を確認し、Gmailを有効化して、Google Workspace用のMXレコードを設定します。
gw.wgconsulting.netは、シンレンタルサーバー側の通常メールドメインとして登録しません。登録すると、回避したいローカル配送の対象になる可能性があります。
手順5:シンレンタルサーバー側のAを残して転送する
シンレンタルサーバー側にもA@wgconsulting.netを残し、次の転送を設定します。
| 項目 | 設定内容 |
|---|---|
| 転送元 | A@wgconsulting.net |
| 転送先 | A@gw.wgconsulting.net |
| サーバー内のメール保存 | 検証中は保存し、正常稼働後に運用方針を決める |
これにより、BからAへ送ったメールは、シンレンタルサーバー内のAで一度受けたあと、専用サブドメインを通ってAのGmailに届きます。
転送ループに注意
転送先をA@wgconsulting.netにすると、同じ場所へ戻り続ける可能性があります。必ずA@gw.wgconsulting.netへ転送します。
手順6:SPF、DKIM、DMARCを確認する
Google Workspaceとシンレンタルサーバーの両方から「@wgconsulting.net」で送信する場合は、両方の送信経路を正しく認証する必要があります。
| 項目 | 役割 | 確認内容 |
|---|---|---|
| SPF | 送信を許可するサーバーを示す | Google Workspaceとシンレンタルサーバーの両方を、1本のSPFレコードに含める |
| DKIM | 送信メールに電子署名を付ける | 各送信サービスで設定できるか確認する |
| DMARC | 認証失敗時の扱いとレポート先を定める | 最初はレポートを確認し、正常性を確認してから段階的に強化する |
SPFレコードは同じドメインに複数作成しません。複数の送信元がある場合も、1本のレコードへまとめます。
設定後に行う送受信テスト
「外部からAへ届いた」だけでは確認不足です。少なくとも、次の6パターンをテストしてください。
| 番号 | 送信元 | 宛先 | 期待する結果 |
|---|---|---|---|
| 1 | 社外 | A | AのGmailで受信 |
| 2 | 社外 | B | Bのサーバーメールで受信 |
| 3 | A | B | Bのサーバーメールで受信 |
| 4 | B | A | AのGmailで受信 |
| 5 | A | 社外 | 社外で受信し、迷惑メールにならない |
| 6 | B | 社外 | 社外で受信し、迷惑メールにならない |
各テストでは、件名に番号と送信時刻を入れます。届かない場合は、エラーメール、迷惑メールフォルダ、シンレンタルサーバーの受信箱、Google Workspaceのメールログを確認してください。
よくあるトラブルと確認箇所
| 症状 | 主な原因 | 確認する場所 |
|---|---|---|
| 外部からBへ届かない | 分割配信の条件または配送先ホストが誤っている | Google Workspaceのルーティング、配送先ホスト |
| AからBへ届かない | 内部から送るメールが分割配信の対象外 | Google Workspaceのルーティング対象 |
| BからAへ届かない | Aの受け皿がない、またはサブドメインへの転送がない | シンレンタルサーバーのAと転送設定 |
| A@gw.wgconsulting.netへ届かない | サブドメインの登録、MX、エイリアス設定が不完全 | Google Workspaceのドメイン管理とDNS |
| 転送メールだけ届かない | サーバー側の迷惑メール処理で止まっている | シンレンタルサーバーの迷惑メールフォルダと処理設定 |
| 社外で迷惑メールになる | SPF、DKIM、DMARCの不備または送信元評価 | DNSと受信メールのヘッダー |
| 同じメールが繰り返し届く | 転送ループまたは二重配送 | 転送先とルーティング条件 |
やってはいけない設定
- 現在の設定を控えずにMXレコードを変更する
- シンレンタルサーバー側のAを、動作確認前に削除する
- 転送先を元のA@wgconsulting.netにする
- gw.wgconsulting.netをシンレンタルサーバー側の通常メールドメインとして登録する
- SPFレコードを複数作成する
- 1方向の受信確認だけで作業完了と判断する
- 迷惑メールを即時削除する設定のまま検証する
この方法が向いている会社・向いていない会社
| 向いているケース | 向いていないケース |
|---|---|
| Google Workspaceが必要な人が一部だけ | 全員がGmail、Drive、カレンダーを日常的に使う |
| 共有・通知用アドレスが多い | 設定を継続管理できる担当者がいない |
| ライセンス費用を抑えたい | 構成を単純化し、障害時の切り分けを容易にしたい |
| DNSとメール設定を管理できる | 監査、保存、セキュリティ方針により全メールの一元管理が必要 |
費用だけを見れば併用にメリットがあります。一方、設定箇所と障害時の確認項目は増えます。削減できるライセンス費用と、設定・保守にかかる手間を比較して決めることが大切です。
まとめ
同じ独自ドメインでGoogle Workspaceとシンレンタルサーバーを併用するには、次の3つが重要です。
- Google Workspaceに存在しない宛先を、分割配信でシンレンタルサーバーへ送る
- シンレンタルサーバー内のローカル配送を前提に、Google Workspace利用者の受け皿を残す
- Google Workspace専用サブドメインへ転送し、Gmailの受信箱まで届ける
この構成なら、必要な担当者だけGoogle Workspaceを利用し、通常のメールや共有アドレスはシンレンタルサーバー側に残せます。
ただし、DNS、Google Workspace、レンタルサーバー、転送、迷惑メール判定が連動します。切り替え前に設定を保存し、6方向の送受信テストを行ってください。
メール設定・不達トラブルのご相談
「一部のメールだけ届かない」「社内同士のメールが届かない」「転送すると迷惑メールになる」といった問題は、1か所の設定変更だけでは解決しないことがあります。
WGCでは、現在のメール構成を整理したうえで、DNS、Google Workspace、レンタルサーバー、転送、送信元認証を横断して確認します。
対応プラン
| プラン | 料金 | 対応内容 | おすすめのケース |
|---|---|---|---|
| メール設定診断 | 33,000円(税込) | MX、SPF、DKIM、DMARC、基本的な送受信の確認と改善点の整理 | メールは使えているが、設定に不安がある |
| Google Workspace導入・併用設定 | 88,000円(税込) | Google Workspaceの基本設定、送信元認証、レンタルサーバーとの併用確認、主要3アドレスまでのテスト、簡易マニュアル | 新規導入または既存サーバーメールとの併用を始めたい |
| 不達復旧・分割配信設計 | 132,000円(税込)から | 不達原因の調査、メールログ・ヘッダー確認、分割配信、ローカル配送回避、転送・迷惑メール設定、送受信テスト | 一部アドレスだけ届かない、転送できない、既存構成が複雑 |
| 緊急復旧 | 165,000円(税込)から | 優先調査、暫定復旧、恒久対応、再発防止設定 | メール不達により業務が止まっている |
料金は標準的な目安です。ドメイン数、メールアドレス数、既存設定の複雑さ、緊急度により変わります。
ご相談時にお知らせいただきたい内容
- 利用中の独自ドメイン
- 利用中のレンタルサーバー
- Google Workspaceで受信したいアドレス
- レンタルサーバーで受信したいアドレス
- 発生している症状と、発生し始めた日時
- 可能であれば、エラーメールの全文またはメールヘッダー