訪日外国人の多様な食習慣対応モデル事業|申請書の書き方と提出手順

令和8年度「多様な食習慣や文化的慣習を持つ訪日外国人旅行者の受入環境整備に向けたモデル事業」申請実務マニュアル

この記事は、観光庁の令和8年度「多様な食習慣や文化的慣習を持つ訪日外国人旅行者の受入環境整備に向けたモデル事業」へ申請する地方公共団体、観光地域づくり法人、観光協会、観光連盟向けの実務マニュアルです。

  • 公募要領を読んでも、どの様式に何を書けばよいか分からない
  • 飲食店、宿泊施設、旅行会社をどう巻き込めば審査で伝わるか分からない
  • 提出直前に、ファイル形式、件名、容量、添付漏れで差し戻されるのが怖い

結論から言うと、この申請は「地域一体で、ベジタリアン・ヴィーガン、ムスリム等の旅行者が安心して周遊できる状態を作る計画」になっていなければ通りません。単独店舗のメニュー開発だけでは弱いです。飲食、宿泊、観光施設、旅行商品、情報発信までを1本の線でつないでください。

この記事を読み終えた時点で、様式1から様式5までの記入順、押さえるべき審査観点、提出メールの作り方まで、そのまま作業に入れる状態になります。

まず確認する公募の基本情報

項目 内容 実務上の判断
公募期間 令和8年4月14日から令和8年6月8日12時必着 締切日の午前提出は危険です。前営業日の17時までに送信してください。
申請対象 地方公共団体、観光地域づくり法人、その他観光関連団体 民間事業者単独ではなく、地域側の主体を前面に出します。
対象事業 多様な食習慣・文化的慣習を持つ訪日外国人旅行者の誘客促進、観光消費拡大、旅行環境整備 「受入整備」と「誘客・消費拡大」の両方を書きます。
実証事業経費上限 1地域あたり税込400万円 400万円以内で現実的に収まる計画にします。超過分は自己負担として分けます。
提出方法 電子メールのみ 申請画面はありません。メール提出です。
提出形式 エクセル形式、パワーポイント形式 全資料をPDF化してはいけません。

✅ この事業は、一般的な補助金のように「設備を買うための申請」ではありません。観光庁と事務局の伴走支援を受けながら、地域の受入モデルを作る実証事業です。採択後は、令和8年7月頃のキックオフミーティング、令和8年7月頃から令和9年1月末頃までの実証、令和9年1月から2月頃の報告書作成、令和9年2月頃のオンラインセミナー参加までを見込んでください。

準備物リスト

区分 準備物 使う場所 作業指示
必須 様式1 申請書 申請団体、参画団体、事業概要の整理 最初に作成します。ここが全様式の親資料です。
必須 様式2 実証事業計画書 取組内容、実施体制、成果目標の記入 審査で最も見られます。抽象表現は禁止です。
必須 様式3 資金計画書 経費内訳の記入 対象外経費を入れると減点要因になります。
必須 様式4 スケジュール表 月別実施工程の記入 7月から1月末までに完了する工程にします。
必須 様式5 事業概要 地域概要、体制図、計画一覧の説明 写真と数値を入れ、審査者が一目で分かる資料にします。
任意 観光計画の抜粋 地域課題の根拠 申請書の該当箇所との対応関係を明記します。
任意 地域の外国人宿泊者数、国籍別観光客数 背景、課題、目標設定 直近年度を明記します。年度不明の数字は使いません。
任意 参画予定事業者の一覧 地域一体の推進体制 飲食、宿泊、観光、旅行、商工団体を分けて整理します。
任意 写真素材 様式5 権利確認済みの写真だけ使います。

申請前に決めるべき事業設計

1 地域の対象範囲を狭く決める

対象地域は、市区町村全域に広げる必要はありません。公募では、市区町村内の一部地域を対象とする申請も可能です。観光客の動線が明確な「駅周辺、温泉街、門前町、城下町、港湾エリア、主要観光地周辺」に絞ってください。

入力例:

本事業の対象地域は、〇〇駅から〇〇寺、〇〇商店街、〇〇温泉街までの徒歩・公共交通で周遊可能なエリアとする。当該地域には、飲食店、宿泊施設、観光施設、体験事業者が集積しており、ベジタリアン・ヴィーガン、ムスリム等の旅行者が安心して滞在できる面的な受入環境を整備する余地が大きい。

⚠️ 「市内全域で取り組む」と書くと、実施体制が薄く見えます。実際に動かせる範囲に絞ってください。

2 参画事業者を5分類でそろえる

分類 最低限入れたい主体 役割
行政 市町村、都道府県 観光政策との接続、庁内調整、広報
観光地域づくり法人等 観光地域づくり法人、観光協会、観光連盟 事業全体の進捗管理、事業者連携、情報発信
飲食 飲食店、食品事業者 メニュー開発、原材料表示、受入対応
宿泊 ホテル、旅館、民泊関連団体 朝食対応、礼拝スペース、案内体制
旅行・体験 旅行会社、ガイド、体験事業者 周遊コース、体験商品、販売導線

審査では、地方公共団体が組み込まれ主体的な役割を担っていること、申請者以外の宿泊事業者、飲食事業者、商工会等の地域関係者が入っていることが見られます。

実録・申請手順

手順1 様式1に申請団体と参画団体を書く

[Image: 様式1の申請団体入力欄]

最初に作るのは様式1です。ここで申請団体、代表者、担当者、連絡先、参画団体を固めます。申請団体名は、提出ファイル名とメール件名にも使うため、略称ではなく正式名称で統一してください。

入力項目 入力例 注意点
申請団体名 〇〇市 以後の全様式で同じ表記にします。
担当部署 産業観光部 観光振興課 メールを受け取る部署名を正確に書きます。
担当者名 〇〇 〇〇 受領確認メールを確認できる担当者にします。
事業参画団体 〇〇観光協会、〇〇旅館組合、〇〇飲食店組合、〇〇商工会、〇〇旅行株式会社 単なる協力予定ではなく、役割まで書きます。

ここで空欄にしてよい項目はありません。未確定の参画事業者がある場合は「調整中」と書かず、最低限合意が取れている団体だけを書いてください。現場では、調整中の飲食店を10店舗並べた結果、採択後に半数が離脱し、体制の説明に苦労した事例があります。申請時点では数より確度を優先します。

手順2 様式2に5分類の事業を入れる

[Image: 様式2の実証事業計画入力欄]

様式2では、事業内容を「戦略・計画」「人材育成・体制強化」「環境整備」「情報発信」「旅行商品造成」に分けて書きます。5分類のうち、1つだけに偏ると弱いです。必ず、地域の現状把握から商品化、発信までをつなげてください。

分類 書くべき内容 入力例
戦略・計画 検討会、現状調査、次年度以降の取組方針 飲食、宿泊、観光施設、行政、観光地域づくり法人による検討会を3回開催し、受入対応方針と次年度以降の継続計画を策定する。
人材育成・体制強化 事業者向け研修、接客対応、原材料確認 飲食店・宿泊施設向けに、ベジタリアン・ヴィーガン、ムスリム対応の基礎研修を実施し、参加事業者20者の接客対応表を作成する。
環境整備 メニュー開発、表示整備、礼拝対応 飲食店8店舗で対応メニューを開発し、宿泊施設3施設で朝食対応と館内案内を整備する。
情報発信 地域サイト、事業者ページ、地図、案内素材 対応可能店舗、宿泊施設、観光施設を掲載した多言語案内ページを作成し、地域内の周遊導線を発信する。
旅行商品造成 モデルコース、体験商品、販売準備 対応飲食店、宿泊施設、観光体験を組み込んだ1泊2日のモデルコースを造成し、旅行会社と販売可能性を検証する。

✅ 「セミナーを開催する」だけでは成果が弱いです。「研修後に、各店舗の対応表を作る」「対応表をもとに情報発信する」「情報発信した店舗をモデルコースに組み込む」まで書いてください。

手順3 目標は事業内容と直接つなげる

[Image: 様式2の目標設定欄]

審査では、適切な目標設定が行われているか、目標達成に必要な事業内容が申請書に組み込まれているかが見られます。

悪い目標 理由 修正後の目標
外国人観光客を増やす 本事業だけで増加要因を説明しにくい 対応可能な飲食店を8店舗、宿泊施設を3施設整備する
地域の認知度を上げる 測定できない 対応施設を掲載した案内ページを公開し、掲載施設数を15件にする
満足度を高める 調査方法が不明 モニターツアー参加者20名へアンケートを実施し、食事対応満足度80%以上を目指す

ここは仮入力で構いませんが、数字は必ず入れてください。数字がない計画は、実施後に成果報告ができません。

手順4 様式3の資金計画は対象経費だけに絞る

[Image: 様式3の資金計画入力欄]

対象経費として整理できるのは、人件費、謝金及び宿泊交通費、借料・損料及び使用料、消耗品費、外部委託費、その他諸経費です。実証事業に従事する派遣社員やアルバイト等の人件費は対象になり得ますが、実証事業実施団体の正職員や正社員の人件費は認められません。

経費項目 入れてよい例 入れてはいけない例
人件費 本実証事業だけに従事するアルバイト人件費 市職員、観光協会正職員の通常人件費
謝金及び宿泊交通費 有識者、専門家、モニター参加者、司会者への謝金・交通費 規定がなく根拠を説明できない高額謝金
借料・損料及び使用料 研修会場費、実証イベント用機材リース料 事業終了後も資産として残る購入品
消耗品費 実証に必要で事業後に資産として残らない物品 通常業務でも使う汎用品
外部委託費 アンケート調査、ページ制作、パンフレット制作 申請書作成代行など成果物が残らない支援
その他諸経費 メディア掲載、告知用ページ構築、パンフレット制作 割引原資、景品、通常の家賃や通信費

⚠️ 主たる業務の多くを外部へ丸投げする計画は不可です。外部委託は「調査」「制作」「発信素材作成」など成果物が残る部分に限定してください。

手順5 様式4は採択後の現実的な月割りにする

[Image: 様式4のスケジュール入力欄]

実証期間は令和8年7月頃から令和9年1月末頃までを想定します。採択後に事務局の伴走支援を受け、観光庁の承認を受けてから実証事業を進めます。採択直後にすぐ支出する前提の計画は危険です。

時期 入れる工程 実務上の注意
7月 キックオフ参加、事務局との計画磨き上げ、参画事業者説明 発注や支出を急がず、承認後に動きます。
8月 現状調査、事業者ヒアリング、研修準備 飲食店の繁忙期を避けて日程調整します。
9月 研修会、メニュー開発、宿泊施設の対応整理 原材料確認表を同時に作ります。
10月 メニュー試作、案内素材制作、情報発信準備 写真撮影は権利確認を済ませます。
11月 モニター検証、モデルコース造成 アンケート項目を事前に固定します。
12月 改善、販売準備、追加発信 年末で事業者が動きにくくなるため、前半に集中します。
1月 成果整理、報告書作成、次年度計画策定 1月末で実証が終わる前提で締めます。
2月 報告書提出、オンラインセミナー参加 発表資料に使える写真と成果数字を整理します。

手順6 様式5は審査者が30秒で理解できる資料にする

[Image: 様式5の事業概要入力画面]

様式5では、申請地域概要、事業実施体制、取組の背景・目的、実証事業計画一覧を整理します。様式5の記入例では、対象地域、申請団体名、年間観光客数、年間延べ宿泊客数、主な観光資源、体制図、取組背景、事業終了時の目指す姿、分類別の計画一覧を記入する構成になっています。

入力例:

【これまでの受入実績】本地域では、欧米、台湾、東南アジアからの来訪が増加している一方、ベジタリアン・ヴィーガン、ムスリム等の旅行者が安心して食事・宿泊・体験を選べる情報が不足している。

【地域の課題】飲食店ごとの個別対応に留まり、宿泊施設、観光施設、旅行商品との連携ができていない。そのため、旅行者が地域内で安心して周遊する導線が形成されていない。

【本事業終了時の目指す姿】飲食、宿泊、観光体験を横断した対応施設が可視化され、観光地域づくり法人を中心に、次年度以降も継続できる受入体制と情報発信体制が構築されている。

提出メールの作り方

[Image: メール提出前の添付ファイル確認画面]

提出は電子メールのみです。提出資料はPDF化せず、エクセル形式及びパワーポイント形式で送ります。提出ファイル名の冒頭には「申請様式_申請団体名」を付けます。メール件名の冒頭には「【公募申請_申請団体名】」を付けます。添付容量は合わせて10メガバイト程度が上限です。大容量送受信サービスは原則使えません。

確認項目 正しい例 誤り
件名 【公募申請_〇〇市】多様な食習慣や文化的慣習を持つ訪日外国人旅行者の受入環境整備に向けたモデル事業 申請書送付、補助金申請、〇〇市です
ファイル名 申請様式_〇〇市_様式1.xlsx 様式1.xlsx、完成版.xlsx、最終修正.xlsx
形式 エクセル、パワーポイント PDF化した一式資料
容量 合計10メガバイト程度以内 写真を圧縮せず30メガバイトで送る
送信後 3開庁日以内に受領確認メールを確認 送信して終わりにする

メール本文の入力例:

観光庁 外客受入担当参事官室 御中

令和8年度「多様な食習慣や文化的慣習を持つ訪日外国人旅行者の受入環境整備に向けたモデル事業」について、申請資料一式を提出いたします。

申請団体名:〇〇市
担当部署:〇〇部〇〇課
担当者名:〇〇 〇〇
電話番号:〇〇
メールアドレス:〇〇

添付資料:
申請様式_〇〇市_様式1.xlsx
申請様式_〇〇市_様式2.xlsx
申請様式_〇〇市_様式3.xlsx
申請様式_〇〇市_様式4.xlsx
申請様式_〇〇市_様式5.pptx

何卒よろしくお願いいたします。

⚠️ 3開庁日を過ぎても受領確認メールが届かない場合は、必ず状況照会してください。送ったつもりで締切を過ぎるのが最も危険です。

差し戻し回避リスト

チェック項目 事務局が見る急所 修正指示
対象団体 地方公共団体、観光地域づくり法人、観光関連団体のいずれか 民間企業単独の申請にしない。
地域一体性 行政、観光、飲食、宿泊、旅行等が連携しているか 体制図に役割を書き込む。
事業趣旨 ベジタリアン・ヴィーガン、ムスリム等の旅行者の誘客に資するか 一般的な観光宣伝だけにしない。
事業分類 戦略・計画、人材育成、環境整備、情報発信、旅行商品造成が整理されているか 5分類の表で見せる。
目標 事業内容と直接関係する数値目標か 店舗数、参加者数、掲載数、造成数を入れる。
経費 対象外経費が入っていないか 家賃、通常人件費、景品、割引原資は入れない。
提出形式 PDF化していないか 元の形式で提出する。
容量 10メガバイト程度以内か 写真を圧縮し、不要な画像を削除する。

進めない原因と対策

起きる問題 原因 解決策
参画事業者が集まらない 「補助金が出る」とだけ説明している 店舗側には、対応メニュー開発、情報発信掲載、周遊コース組込の具体メリットを説明する。
計画が薄く見える 研修会とパンフレット作成だけで終わっている 研修後の対応表作成、店舗整備、情報発信、モデルコース造成まで足す。
経費が通りにくい 通常業務の費用が混ざっている 本実証事業に直接使う費用だけに分ける。
写真容量が大きすぎる 様式5に高画質写真をそのまま貼っている 写真は圧縮し、1枚ごとにタイトルを付ける。
提出後に不安になる 受領確認を待たずに作業を終えている 送信日、送信先、添付ファイル、受領確認メールを一覧で管理する。

WGCの視点:加点を狙うなら「次年度の自走化」を1枚入れる

本事業は、単年度の実証で終わる計画よりも、次年度以降も地域で継続できる体制が見える計画の方が強いです。公募要領でも、旅行商品造成・販売、情報発信等が次年度以降も継続できるよう、自走化に向けた体制構築・計画策定が実証終了時の地域イメージとして示されています。

加点の一工夫として、様式2または参考資料に「次年度以降の継続運用表」を1枚入れてください。

継続項目 担当 次年度の動き
対応店舗情報の更新 観光地域づくり法人 年2回、掲載情報を確認する。
新規事業者研修 観光協会、商工会 新規参加店舗向けに年1回研修を行う。
モデルコース販売 旅行会社、体験事業者 造成したコースを販売候補として磨き上げる。
受入品質確認 行政、宿泊事業者、飲食事業者 旅行者アンケートを継続し改善点を共有する。

✅ ここまで書くと、「今年だけのイベント」ではなく「地域の観光基盤整備」として伝わります。

まとめ

この公募で重要なのは、きれいな文章ではありません。審査者が見たいのは、地域の誰が、いつ、何を整備し、どの旅行者が、どの施設を使い、どのように周遊できるようになるのかです。

まずは、様式1で体制を固め、様式2で5分類の事業をつなぎ、様式3で対象経費だけに絞り、様式4で1月末までに終わる工程に落とし込み、様式5で全体像を30秒で伝えてください。

詰まった時だけ、個別の論点を相談すれば十分です。申請書は、完璧な作文ではなく、実行できる計画にしてください。

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