小規模事業者持続化補助金は、個人事業主も対象になる補助金です。 法人でなければ申請できない制度ではなく、要件を満たす商工業者であれば、店舗改装、広告、新商品開発、設備導入、ホームページ制作などの販路開拓に活用できます。
従業員を雇っていない一人の個人事業主でも、一般型・通常枠への申請を検討できます。 また、開業して間もなく、まだ一度も確定申告を迎えていない場合にも申請方法が用意されています。
一方で、「個人事業主なら誰でも申請できる」「開業届を出していれば対象」「事業で使うものなら何でも補助される」わけではありません。 業種や従業員数、事業の実態、補助金で行う取組、購入する経費など、それぞれ条件があります。
この記事では、2026年度の第20回〈一般型・通常枠〉について、個人事業主が申請できる条件、必要書類、補助額、対象経費、申請手順まで順番に整理します。
個人事業主について先に結論
- 個人事業主も一般型・通常枠の対象になり得る
- 従業員が0人でも通常枠そのものは申請を検討できる
- 青色申告だけでなく白色申告の個人事業主も対象になり得る
- 開業直後でも、申請時点ですでに事業を開始していれば対象になり得る
- 開業届を出しただけで、まだ事業を始めていない場合は対象外
- 賃金引上げ特例を使う場合は、別途従業員に関する要件がある
個人事業主も小規模事業者持続化補助金の対象になる
第20回の公募要領では、補助対象となり得る事業者として、株式会社や合同会社などの法人と並んで、「個人事業主(商工業者であること)」が明記されています。
そのため、法人化していなくても問題ありません。 店舗を経営している方だけでなく、要件を満たせば、フリーランスや士業、コンサルタントなども対象になり得ます。
ただし、「個人事業主」という税務上の呼び方だけで決まるわけではありません。 まず、次の条件を確認します。
| 確認する項目 | 第20回での考え方 |
|---|---|
| 事業形態 | 商工業を営む個人事業主であること |
| 所在地 | 日本国内に居住していること |
| 事業の状況 | 申請時点ですでに事業を開始していること |
| 従業員数 | 業種ごとに定められた「小規模事業者」の範囲内であること |
| 補助事業 | 経営計画に基づく販路開拓等の取組であること |
| 過去の利用 | 過去の持続化補助金の利用状況によっては申請制限がある |
従業員がいない一人の個人事業主でも申請できる?
できます。
「小規模事業者」の従業員数は上限を定めたものなので、「最低1人は従業員が必要」という制度ではありません。 そのため、自分一人で事業を行っている個人事業主でも、一般型・通常枠そのものは申請を検討できます。
ただし、従業員の賃上げを条件とする賃金引上げ特例や賃金引上げ加点は別です。 従業員がいなければ給与支給総額の増加率を計算できないため、通常枠への申請と賃上げ関連の特例は分けて考えます。
フリーランスや士業も対象になる?
「フリーランス」という名称だけで対象・対象外が決まるわけではありません。 個人事業主として商工業を営み、その他の要件を満たしているかで判断します。
また、第19回の公式FAQでは、弁護士、税理士、行政書士、弁理士、社会保険労務士などの士業や、経営コンサルタントも対象になると案内されています。
一方、医師、歯科医師、助産師は、第20回の公募要領で補助対象にならない者として明記されています。
農業をしている個人事業主は?
農業であれば一律に対象外というわけでもありません。
系統出荷による収入のみの個人農業者は対象外ですが、農作物を加工して商品として販売する、農作物を使った料理を提供するなど、商工業にあたる事業については、その事業に必要な経費が対象になり得ます。
個人事業主の従業員数は何人まで?
個人事業主であっても、従業員を雇っている場合は「小規模事業者」に該当するかを確認します。
| 業種 | 常時使用する従業員数 |
|---|---|
| 商業・サービス業 (宿泊業・娯楽業を除く) |
5人以下 |
| 宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
| 製造業その他 | 20人以下 |
例えば、小売店、美容室、一般的なサービス業などでは5人以下が基本です。 製造業や建設業などは20人以下となります。
パート・アルバイトも人数に入る?
「正社員だけを数える」という考え方ではありません。
第20回では、労働基準法上の「解雇の予告を必要とする者」を基準として常時使用する従業員を判定します。 そのため、勤務形態によってはパートタイム労働者も人数に含まれます。
一方、会社役員や同居の親族従業員、一定の日雇労働者、2か月以内の期間を定めて使用される者、一定の季節労働者、試用期間中の者などは、常時使用する従業員に含まれません。
賃金引上げ特例の「従業員」とは別です
小規模事業者に該当するかを判定するときの従業員と、賃金引上げ特例・加点で給与を計算するときの従業員は、同じ数え方ではありません。
従業員がいる事業者は、この2つを混同しないようにしてください。
開業したばかりの個人事業主でも申請できる
「まだ1回も確定申告していないから申請できない」とは限りません。
第20回では、決算期を一度も迎えていない個人事業主について、通常の確定申告書に代えて、開業届と、開業後に売上が発生していることを確認できる売上台帳等を提出する方法が用意されています。
つまり、開業直後でも、すでに事業を開始して売上が発生しているのであれば申請を検討できます。
開業届を出しただけでは対象になりません
申請時点でまだ事業を開始していない創業予定者は対象外です。 開業届を提出済みでも、開業日が申請日より後の場合や、実際の事業活動が始まっていない場合は対象になりません。
これから開業する段階で利用できる制度を探している場合は、一般型・通常枠だけでなく、別制度である「小規模事業者持続化補助金〈創業型〉」の要件も確認します。 なお、一般型・通常枠と創業型を同時に申請することはできません。
青色申告でなくても申請できる?
青色申告であることは、通常枠の申請要件ではありません。
個人事業主の必要書類は、申告方法によって次のように分かれます。
| 申告方法・状況 | 主な提出書類 |
|---|---|
| 青色申告 | 確定申告書第一表・第二表、所得税青色申告決算書1~4面 |
| 白色申告 | 確定申告書第一表・第二表、収支内訳書1~2面 |
| まだ一度も決算期を迎えていない | 開業届、開業後の売上を確認できる売上台帳等 |
すでに確定申告を行う時期を迎えている事業者が、「確定申告書がないので開業届だけ出せばよい」という意味ではありません。 開業届と売上台帳で代替できるのは、決算期を一度も迎えていない場合です。
また、確定申告書等にマイナンバーが記載されている場合は、番号が見えないよう黒塗りして提出します。
個人事業主はいくら補助される?
個人事業主だから補助上限が低くなるわけではありません。 第20回・一般型通常枠の基本的な補助上限と補助率は、法人と同じです。
| 利用する特例 | 補助上限 | 原則補助率 |
|---|---|---|
| 特例なし | 50万円 | 2/3 |
| インボイス特例 | 100万円 | 2/3 |
| 賃金引上げ特例 | 200万円 | 2/3 |
| インボイス特例+賃金引上げ特例 | 250万円 | 2/3 |
賃金引上げ特例を利用する一定の赤字事業者については、補助率が3/4になります。
従業員ゼロなら「最大250万円」とは考えない
第20回では「最大250万円」という金額が目立ちますが、250万円は誰でも利用できる上限ではありません。
通常枠の上限は50万円です。 インボイス特例の条件を満たせば50万円、賃金引上げ特例の条件を満たせば150万円が上乗せされます。
そのため、従業員がいない個人事業主の場合は、従業員の給与を引き上げる賃金引上げ特例を前提に「最大250万円」と考えるのではなく、通常枠と、利用できる場合はインボイス特例を中心に検討します。
個人事業主もインボイス特例を使える?
要件を満たせば利用できます。
第20回のインボイス特例は、2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間で一度でも免税事業者だった事業者、または2023年10月1日以降に創業した事業者のうち、所定の条件を満たして適格請求書発行事業者となる事業者が対象です。
単に「インボイス登録番号を持っている」というだけでは判断できません。 過去の免税期間、創業時期、過去のインボイス特例利用状況まで確認します。
ここでいう「インボイス特例」は、小規模事業者持続化補助金の補助上限を50万円上乗せする特例です。 デジタル化・AI導入補助金の「インボイス枠」とは別の制度です。
個人事業主は何に補助金を使える?
個人事業主だから特別な経費区分になるわけではありません。 第20回では、次の8区分が補助対象経費として定められています。
| 経費区分 | 対象となり得る例 |
|---|---|
| ① 機械装置等費 | 新サービス用設備、製造設備、ショーケースなど |
| ② 広報費 | チラシ、看板、インターネット広告、SNS広告など |
| ③ ウェブサイト関連費 | ホームページ、ECサイト、顧客管理システム等 |
| ④ 展示会等出展費 | 展示会・商談会への出展費用など |
| ⑤ 旅費 | 販路開拓のために必要な交通費・宿泊費など |
| ⑥ 新商品開発費 | 試作品の原材料、試作パッケージなど |
| ⑦ 借料 | 補助事業に必要な機器・会場等のレンタル費など |
| ⑧ 委託・外注費 | 店舗改装、バリアフリー工事など |
重要なのは、「個人事業で使うもの=補助対象」ではないという点です。
持続化補助金は、日常的な事業経費を補填する制度ではありません。 経営計画に基づいて行う販路開拓や、その販路開拓と合わせて行う業務効率化に必要な経費であることが前提です。
パソコンは対象外
第20回では、パソコン、タブレット、事務用プリンター、複合機、モニター、ルーター、スマートフォンなど、汎用性が高く目的外使用が可能な機器は対象外です。
「個人事業主だから仕事と私生活の両方で使う」という理由で認められるわけではなく、むしろ私用にも使える汎用品は対象外経費として明記されています。
ホームページや広告だけの申請にも注意
ホームページ制作等のウェブサイト関連費は対象になり得ますが、ウェブサイト関連費だけで申請することはできません。 第20回では、ウェブサイト関連費の補助金交付申請額は上限30万円です。
インターネット広告やSNS広告は広報費に区分され、こちらも補助金交付申請額の上限は30万円で、広報費だけの申請はできません。
個人事業主が申請するときの必要書類
個人事業主の場合、法人とは提出する決算・税務関係書類が異なります。
| 書類・手続き | 個人事業主 |
|---|---|
| 様式1・2・3・5・6 | 申請システムへ直接入力 |
| 事業支援計画書〈様式4〉 | 地域の商工会・商工会議所から発行を受ける |
| 確定申告書 | 第一表・第二表 |
| 青色申告の場合 | 所得税青色申告決算書1~4面 |
| 白色申告の場合 | 収支内訳書1~2面 |
| 決算期を一度も迎えていない場合 | 開業届+開業後の売上を確認できる売上台帳等 |
| 特例・加点を利用する場合 | 利用する制度に応じて追加書類が必要 |
GビズIDも早めに準備する
第20回は電子申請のみです。 申請にはGビズIDのアカウントが必要になります。
GビズIDを持っていない場合は、事業計画を作り終えてから取得するのではなく、申請準備と並行して早めに手続きを進めてください。
第20回の申請期限|個人事業主も様式4が必要
| 手続き | 第20回の日程 |
|---|---|
| 申請受付開始 | 2026年11月5日 |
| 事業支援計画書〈様式4〉発行依頼締切 | 2026年12月4日 |
| 申請受付締切 | 2026年12月15日 17:00 |
| 採択発表 | 2027年3月頃予定 |
個人事業主でも、地域の商工会または商工会議所から事業支援計画書〈様式4〉の発行を受ける必要があります。
そのため、「12月15日までに申請書を完成させればよい」と考えると間に合わない可能性があります。 様式4の発行依頼は12月4日が締切で、計画内容の確認や面談等もあるため、それより前に事業計画をある程度完成させておく必要があります。
商工会・商工会議所の会員でないと申請できない?
第20回の公募要領では、商工会・商工会議所の会員であることを補助対象者の条件とはしていません。
また、第19回の公式FAQでも「会員、非会員を問わず応募可能」と案内されています。 ただし、申請する事業について地域の商工会・商工会議所の支援を受け、様式4を発行してもらう必要があります。
商工会と商工会議所のどちらを利用するかは、事業を営んでいる地域によって決まります。
個人事業主の申請手順
- GビズIDを準備する
電子申請に必要なアカウントを準備します。 - 自社の経営状況と販路開拓の計画を整理する
現在の顧客、売上、強み、課題と、今後どのような顧客を増やすのかを整理します。 - 補助金で行う取組と経費を決める
広告、設備、新商品開発、店舗改装など、販路開拓に必要な取組を具体化します。 - 申請システムへ経営計画・補助事業計画を入力する
様式2・3等の内容を作成します。 - 商工会・商工会議所へ様式4を依頼する
第20回は2026年12月4日が発行依頼の締切です。 - 電子申請を完了する
第20回は2026年12月15日17時までに申請します。 - 採択後、見積書等を提出して交付決定を受ける
採択と交付決定は別です。 - 交付決定後に発注・契約・購入する
原則として交付決定前の発注や契約は補助対象になりません。 - 事業実施後に実績報告を行う
証拠書類を提出し、補助金額の確定後に補助金が支払われます。
個人事業主が特に間違えやすいポイント
1.補助金は先にもらえるわけではない
持続化補助金は原則として後払いです。
例えば75万円の補助対象事業を行い、補助率2/3で50万円の補助を受ける場合でも、最初に25万円だけ用意すればよいわけではありません。 原則として、まず自分で取引先への支払いを行い、実績報告・補助金額の確定を経て補助金が入金されます。
2.採択されたらすぐ購入できるわけではない
採択通知と交付決定は別です。
採択されても、その時点で補助対象となる設備を発注したり、店舗改装を契約したりしてはいけません。 補助対象となる発注・契約・支払いは、原則として交付決定日以降に行います。
3.複数の屋号があっても何件も申請できない
一人の個人事業主が複数の屋号を使用していても、第20回の同一受付締切回に応募できるのは1件です。
例えば「飲食店」と「ネットショップ」で別々の屋号を使っていたとしても、同じ個人事業主として2件申請することはできません。 どの事業で、どの販路開拓を行うのかを整理して申請します。
4.事業で使うものでも対象外になる
パソコン、通常の事務用品、商品の仕入れ、通常の家賃、水道光熱費、名刺、求人広告などは、事業で使うからといって補助対象になるわけではありません。
補助金を使うために欲しいものを並べるのではなく、「新しい顧客を増やすために何をするのか。その取組に何が必要なのか」という順番で計画を作ります。
個人事業主についてよくある質問
個人事業主でも50万円もらえますか?
個人事業主でも、通常枠の補助上限は50万円です。 ただし「50万円が定額でもらえる」という意味ではありません。
原則として補助対象経費の2/3と補助上限を比較して補助金額が決まります。 また、審査があるため、申請すれば必ず採択される制度でもありません。
従業員が一人もいなくても大丈夫ですか?
通常枠そのものは申請を検討できます。 小規模事業者の従業員数は上限を定めたものなので、従業員0人だから通常枠の対象外になるわけではありません。
ただし、賃金引上げ特例・賃金引上げ加点など、従業員の給与を条件とする制度は別に確認が必要です。
白色申告でも申請できますか?
申請できます。 第20回の公募要領では、白色申告の個人事業主について、確定申告書第一表・第二表と収支内訳書1~2面を提出する方法が定められています。
開業したばかりで確定申告書がありません
決算期を一度も迎えていない場合は、開業届と、開業後に売上が発生していることを確認できる売上台帳等を提出する方法があります。
ただし、申請時点でまだ事業を開始していない場合は対象外です。
商工会や商工会議所に入会しないと申請できませんか?
会員であること自体は申請要件ではありません。 ただし、地域の商工会・商工会議所から事業支援計画書〈様式4〉の発行を受け、その支援を受けながら事業を進めることが必要です。
個人事業主でもホームページ制作に使えますか?
販路開拓のためのホームページ・ECサイト等は対象になり得ます。 ただし、第20回ではウェブサイト関連費だけで申請することはできず、補助金交付申請額の上限も30万円です。
パソコンの購入には使えますか?
第20回の一般型・通常枠では、パソコン、タブレット、モニター、事務用プリンターなどの汎用品は対象外です。
仕事で使うパソコンだから対象になる、という制度ではありません。
個人事業主は、まずこの5点を確認する
- 申請時点ですでに事業を開始しているか
- 自分の業種と従業員数が小規模事業者の範囲に入るか
- 新しい顧客を増やすために、何を行いたいのか
- 購入・発注したいものが補助対象経費に該当するか
- 12月4日の様式4発行依頼までに事業計画を準備できるか
個人事業主でも利用しやすい補助金ですが、単に「設備を買いたい」「ホームページを作りたい」というだけで申請内容が決まるわけではありません。
現在の事業、顧客、課題を整理したうえで、どのような販路開拓を行い、その結果として売上や売上総利益をどう増やすのかを計画に落とし込むことが重要です。
申請できるか分からない場合や、対象経費・事業計画の組み立て方を確認したい場合は、現在の事業内容や検討している投資内容をもとに整理できます。
参考にした公式資料
本記事は2026年10月10日時点で公表されている第20回公募要領を基にしています。 第20回の参考資料・「申請時によくあるご質問」には、現時点で準備中の資料があります。申請時には最新の公式資料をご確認ください。