小規模事業者持続化補助金では、広告、設備、新商品開発、店舗改装、ホームページ制作など、販路開拓に必要なさまざまな経費を申請できます。
ただし、「事業で使うものなら補助対象になる」という制度ではありません。 同じ支出でも、何のために使うのか、どの経費区分に該当するのか、いつ発注・支払いをするのかによって、補助対象になるかが変わります。
2026年度の第20回〈一般型・通常枠〉では、補助対象経費は8つの経費区分に整理されています。 さらに、広報費・ウェブサイト関連費の上限や、インターネット広告の区分など、過去回と取扱いが変わっている部分もあります。
対象経費を確認するときは、この順番で考えます
- 販路開拓や、それと合わせて行う業務効率化に必要な経費か
- 8つの経費区分のどこに該当するか
- その経費区分特有の上限・条件を満たすか
- パソコン・車両・通常経費などの対象外経費に該当しないか
- 交付決定後に発注・契約・支払いを行えるか
- 見積書・請求書・領収書・成果物等を残せるか
この記事では、第20回の対象経費8区分を一覧で確認したうえで、対象外になりやすい費用、経費区分の選び方、経費明細を作るときの考え方まで解説します。
小規模事業者持続化補助金の対象経費は8区分
第20回の一般型・通常枠で申請できる経費は、次の8区分です。
| 経費区分 | 主な対象例 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| ① 機械装置等費 | 製造設備、ショーケース、特殊印刷プリンター、3Dプリンター等 | 単なる買い替え、汎用PC、一般車両等は対象外 |
| ② 広報費 | チラシ、看板、ネット広告、SNS広告、DM等 | 補助金交付申請額は上限30万円。広報費だけの申請不可 |
| ③ ウェブサイト関連費 | HP、ECサイト、システム、アプリ、SEO対策等 | 補助金交付申請額は上限30万円。ウェブ費だけの申請不可 |
| ④ 展示会等出展費 | 展示会・商談会の出展料、関連運搬費、通訳・翻訳費等 | 補助事業期間外の展示会等は対象外 |
| ⑤ 旅費 | 展示会・商談会など販路開拓に必要な交通費・宿泊費 | 通常営業、視察、タクシー、レンタカー等は対象外 |
| ⑥ 新商品開発費 | 試作品の原材料、試作パッケージ、設計・デザイン等 | テストマーケティング・市場調査との関係が重要 |
| ⑦ 借料 | 補助事業に必要な機器・設備・会場等のレンタル費 | 通常の事務所家賃などは原則対象外 |
| ⑧ 委託・外注費 | 店舗改装、バリアフリー工事、専門業務の外注等 | ①~⑦に該当するものを委託・外注費へ変更することはできない |
重要なのは、請求書に書かれた名称ではなく、実際に何を行うための支出なのかで経費区分を判断することです。
例えば制作会社から「業務委託費」として請求されても、中身がホームページ制作なら「委託・外注費」ではなく「ウェブサイト関連費」です。
① 機械装置等費|設備・機械の購入
機械装置等費は、補助事業を行うために必要な機械や設備を購入する費用です。
例えば、新しい商品・サービスを提供するための製造設備や、販売量を増やすための冷蔵庫・オーブン、特殊印刷プリンターなどが対象になり得ます。
- 新サービス提供のための機械
- 生産・販売量を増やすための設備
- ショーケース
- オーブン・冷凍冷蔵庫
- 特殊印刷プリンター
- 3Dプリンター
単なる買い替えは対象外
現在使用している設備が古くなったという理由だけで、新しい設備へ交換する費用は対象になりません。
新しい販路開拓やサービスの提供など、今回の補助事業を行うために必要な設備であることが重要です。
パソコン・タブレットは対象外
第20回では、次のような汎用品は対象外として明記されています。
- パソコン
- タブレット
- 事務用プリンター・複合機
- モニター
- サーバー
- ルーター・Wi-Fi機器
- WEBカメラ
- ヘッドセット・イヤホン
- 電話機
- その他、汎用性が高く目的外使用できるもの
「仕事で使うから」という理由だけでは補助対象になりません。
50万円以上の設備は処分制限にも注意
単価50万円〈税抜〉以上の機械装置等は「処分制限財産」に該当します。
補助金を受け取った後であっても、一定期間は勝手に売却、譲渡、廃棄、担保提供などをできない場合があります。
② 広報費|チラシ・広告・SNS広告など
商品・サービスの販路を広げるために行う広告や販促に使う費用です。
- チラシ・カタログの制作、発送
- 新聞・雑誌広告
- 看板
- インターネット広告
- バナー広告
- Google・Yahoo!等の検索広告
- SNS広告
- SNS運用代行
- Webプレスリリース
- DM
第20回はインターネット広告・SNS広告が「広報費」
過去の記事を見ると、インターネット広告をウェブサイト関連費として説明しているものがあります。
しかし、第20回ではインターネット広告・SNS広告は「広報費」として扱います。
広報費の補助金額は上限30万円
第20回では、広報費について補助金交付申請額が30万円までとされています。
また、広報費だけで持続化補助金を申請することはできません。
会社案内だけでは対象にならない
単なる企業PR、会社案内、求人広告などは対象外です。
今回の補助事業で販売する商品・サービスを、新しい顧客へ届けるための広報であることが必要です。
③ ウェブサイト関連費|HP・EC・システム・SEO
ホームページ、ECサイト、システム、アプリ等の開発・構築・更新・改修・運用に使用する経費です。
- 新規ホームページ制作
- ホームページリニューアル
- ECサイト
- 顧客管理システム
- アプリケーション開発
- 販路開拓に使う特定業務用ソフト
- 作業内容・効果が明確なSEO対策
- 商品ページに使用する写真・動画制作
第20回では、ウェブサイト関連費についても補助金交付申請額の上限は30万円です。 また、ウェブサイト関連費だけで申請することはできません。
ホームページ制作・リニューアルについては、別の記事で詳しく整理しています。
ホームページ制作費が30万円まで、という意味ではない
30万円は制作会社へ発注できる金額の上限ではなく、ウェブサイト関連費として申請できる補助金交付申請額の上限です。
例えば補助率2/3で45万円のホームページ制作費が全額対象として認められる場合、補助金額は30万円になります。
通常のソフト更新料は対象外
すでに導入しているソフトウェアの更新料や、家庭・一般事務用ソフトなどは対象外です。
また、ウェブサイト・システムに関するコンサルティングやアドバイス費用だけを計上することもできません。
④ 展示会等出展費|展示会・商談会への出展
新商品やサービスを展示会・商談会へ出展し、新しい取引先や顧客を開拓するための費用です。
- 展示会・商談会の出展料
- 出展に必要な運搬費
- 通訳料
- 翻訳料
オンライン展示会・商談会も対象になり得ます。
展示会の申込みと支払いは分けて考える
展示会については、交付決定前に出展申込みをすること自体は認められる場合があります。
ただし、請求書の発行や支払いなどの条件が別にあるため、申込み可能だからといって先に支払いまで進めないよう注意します。
⑤ 旅費|販路開拓に必要な交通費・宿泊費
補助事業として行う販路開拓に直接必要な出張の交通費・宿泊費です。
例えば、展示会への出展や商談会への参加に必要な新幹線・航空券・宿泊費などが対象になり得ます。
対象外になりやすい旅費
- 通常の営業活動
- 視察・セミナー参加
- タクシー
- レンタカー
- ガソリン代
- 駐車場代
- 高速道路料金
- グリーン車・ビジネスクラス等の追加料金
- 日当
「仕事で移動した」というだけでは足りず、補助事業計画に記載した販路開拓との関係を説明できる必要があります。
⑥ 新商品開発費|試作品・パッケージ開発など
新商品の試作や、新しいパッケージを開発するために必要な費用です。
- 試作品の原材料
- 試作パッケージ
- 設計費
- デザイン費
- 製造・加工費
- 商品改良費
第20回はテストマーケティング・市場調査が重要
第20回では、新商品開発についてテストマーケティングや市場調査を行った結果を踏まえたもの、またはそれらを伴うものであることが重要になっています。
申請時点でまだ実施していない場合でも、補助事業中に実施し、実績報告でその内容・結果を説明する必要があります。
単に「新商品を作りたい」だけではなく、
- 誰に販売するのか
- どのような需要があるのか
- どのように市場へ試すのか
- 結果を商品へどう反映するのか
まで考えます。
完成後に販売する商品の材料費とは別
新商品開発費で認められる原材料は、試作に必要な最低限の数量です。
実際に販売する商品の仕入れや、完成後に販売する商品用の材料費として利用することはできません。
⑦ 借料|機器・会場などのレンタル
補助事業を実施するために直接必要な機器・設備等のリース料・レンタル料です。
商品・サービスのPRイベントを開催するための会場費なども、借料に該当します。
普段の事務所家賃は原則対象外
通常使用している事務所や店舗の家賃を、持続化補助金で支払うことは原則できません。
一方、新しい販路開拓の取組として新たに場所を借りる場合など、条件によっては対象になるケースがあります。
⑧ 委託・外注費|店舗改装・専門業務の外注
①から⑦の経費区分に当てはまらず、自社だけでは実施することが難しい業務を第三者へ委託・外注する費用です。
- 店舗改装
- バリアフリー工事
- 利用客向けトイレの改装
- 製造・生産強化のためのガス・水道・排気工事
- 移動販売車等の内装・改造
ホームページ制作を「委託・外注費」にしてはいけない
制作会社へ外注するからといって、すべてが委託・外注費になるわけではありません。
ホームページ・システム開発等は③ウェブサイト関連費へ計上します。
経費区分の上限を避けるために、請求書の名称だけを「業務委託費」に変更して別区分へ入れることはできません。
対象外経費|事業で使っても補助されないものがある
8区分のどこかに近い費用であっても、対象外経費として定められているものは申請できません。
| 対象外になりやすいもの | 例 |
|---|---|
| 汎用品 | PC、タブレット、プリンター、モニター、電話機等 |
| 通常の事業経費 | 既存設備の単なる交換、商品仕入れ等 |
| 車両 | 自動車、キッチンカー、フォークリフト等 |
| 固定的な経費 | 通常の家賃、駐車場代、光熱費、通信費等 |
| 消耗品 | 文房具、用紙、インク、USBメモリ、梱包材等 |
| 人件費 | 役員報酬、従業員給与、アルバイト代等 |
| 申請関連費 | 補助金申請書・実績報告書の作成支援費 |
| 一般的なコンサル費 | コンサルティング・アドバイス費用 |
| 成功報酬 | 売上・契約数等に応じて課金される費用 |
「対象経費かどうか」は5つの質問で確認する
- 今回の販路開拓に本当に必要か
普段から使っているもの、老朽化したものの交換ではなく、今回の補助事業との関係を確認します。 - 8つの経費区分のどこに入るか
発注先の見積書の名称ではなく、実際の内容で判断します。 - その経費区分の個別条件を満たすか
広報費・ウェブサイト関連費の30万円上限などを確認します。 - 対象外経費に該当しないか
PC、車両、通常家賃、商品仕入れなどは別途除外規定があります。 - 発注から実績報告まで証拠を残せるか
見積書、発注書、請求書、振込記録、成果物などを残せる取引か確認します。
経費明細表を書くときは「何を買うか」が分かるようにする
申請では、補助事業で使用する経費について、経費区分や内容、金額を整理します。
ここで避けたいのが、
設備一式 100万円
広告費一式 30万円
ホームページ一式 60万円
のように、何を購入・発注するのか分からない書き方です。
経費の必要性と価格の妥当性を確認できるよう、内容を具体的にします。
経費明細は「内容・数量・単価」を意識する
例えば機械装置であれば、
経費明細の考え方
業務用オーブン ○○型 1台 450,000円
新商品の製造量を増やすために導入し、月○個の追加生産を可能にする。
というように、少なくとも何を・何個・いくらで導入するのかが分かる状態にします。
複数の内容を一つの見積書にまとめてもらう場合も、可能な限り内訳を確認できる形にしておきます。
経費区分を決めてから見積書を取る
先に制作会社や販売会社へ見積もりを依頼し、その後で無理に経費区分へ当てはめるより、
補助事業の内容 → 必要な経費 → 経費区分 → 見積書
の順番で整理する方が分かりやすくなります。
50万円を超える発注は相見積もりが必要
第20回では、原則として1件の発注総額が50万円〈税込〉を超える場合、2者以上から見積もりを取得します。
例えば、
- 設備購入 70万円
- ホームページ制作 60万円
- 店舗改装 150万円
といった発注を行う場合は、相見積のルールを確認します。
中古品は金額に関係なく2者以上
中古品を購入する場合はさらに厳しく、金額にかかわらず2者以上の中古品販売事業者から同等品の見積もりを取得する必要があります。
中古品については、「この販売店からしか買えない」という理由書による随意契約は認められません。
交付決定前に発注すると対象外
採択通知と交付決定は別です。
補助対象となる発注・契約・購入・支払いは、原則として交付決定後に行います。
採択されたという連絡を受けた時点で設備を注文したり、制作会社と正式契約を結んだりすると、交付決定前の発注になる可能性があります。
見積書を取得することと、正式に発注することは分けてください。
支払い方法と証拠書類にも注意する
対象経費であっても、支払い方法や証拠書類に問題があると補助対象外になることがあります。
支払いは銀行振込が原則
補助対象経費の支払いは銀行振込が原則です。
1取引10万円〈税抜〉を超える現金払いは、原則として認められません。
クレジットカードは引き落とし日まで確認する
クレジットカード払いでは、カードを利用した日だけではなく、銀行口座からの引き落としまで補助事業期間中に完了している必要があります。
事業終了間際にカード決済をすると、口座引き落としが期限後になる可能性があるため注意してください。
支払っただけでは補助対象にならない
補助事業期間中に支払いが終わっていても、実際の取組が完了していなければ対象にならないことがあります。
例えば、
- 購入した設備をまだ使用していない
- ホームページが完成したが公開していない
- チラシを印刷したが配布していない
- 広告費を支払ったが掲載期間が補助事業終了後
といった状態です。
発注・納品・支払い・実際の販路開拓まで補助事業期間内に完了させることを意識します。
経費支出管理は採択後から重要になる
採択後は、申請した経費について、見積書、発注・契約の記録、納品、請求、支払い、成果物などを整理しながら事業を実施します。
最終的には実績報告で、申請した補助事業を実際に行い、適切に支払ったことを証明する必要があります。
申請時から資料を残す前提で取引する
ネット購入やオンライン広告なども、発注日、契約内容、請求金額、支払金額、掲載実績などを後から確認できる取引方法を選びます。
第20回の採択後に使用する具体的な様式や「経費支出管理表」等については、今後公表される第20回の補助事業の手引きを確認してください。
過去回の様式をそのまま第20回へ流用するのではなく、採択後に公開される最新版を使用します。
対象経費についてよくある質問
パソコンは補助対象ですか?
第20回の一般型・通常枠では、パソコンやタブレット、一般的なPC周辺機器は対象外です。
ホームページ制作は対象ですか?
販路開拓のためのホームページ制作・リニューアルは対象になり得ます。
ただし、ウェブサイト関連費だけでは申請できず、補助金交付申請額の上限は30万円です。
SNS広告やGoogle広告は対象ですか?
対象になり得ます。 第20回では、インターネット広告・SNS広告は「広報費」に区分されます。
車は購入できますか?
一般的な自動車、キッチンカー、フォークリフト等は対象外です。 一方、税法上「機械及び装置」に区分される一部の自走式作業用機械設備などは別途確認します。
店舗改装は対象ですか?
販路開拓のために必要な店舗改装は、委託・外注費として対象になり得ます。
一方、単なる移転・解体や、住宅部分の改装、不動産の取得に当たる工事などは対象外となる場合があります。
コンサルティング費用は対象ですか?
一般的なコンサルティング・アドバイス費用は対象外です。 また、補助金申請書や実績報告書の作成支援費用も補助対象になりません。
申請支援会社への成功報酬は対象ですか?
対象外です。 補助金申請の作成・手続き費用や成功報酬を、持続化補助金の補助対象経費として申請することはできません。
経費を決める前に「何を買うか」ではなく「何をするか」を決める
持続化補助金では、最初に欲しい設備や制作物を決めてから申請書を作るよりも、
現在の経営課題 → 増やしたい顧客 → 行う販路開拓 → 必要な経費
という順番で考える方が自然です。
例えば、
経費を組み立てる例
現在は店舗販売のみで商圏が限られている。
新商品を開発し、ECサイトで地域外へ販売する。
そのために、試作品の開発費、商品撮影、ECサイト制作、ネット広告を実施する。
という計画なら、
- 新商品開発費
- ウェブサイト関連費
- 広報費
という複数の経費が、一つの販路開拓計画の中でつながります。
「補助対象だから購入する」のではなく、売上・売上総利益を増やすための計画に必要な経費かを基準に判断しましょう。
対象経費・経費区分を確認したい方へ
「この設備は対象になるのか」「ホームページと広告をどう分けるのか」「店舗改装はどの区分なのか」など、経費区分は見積もりを取る前に整理しておくと申請を進めやすくなります。
- 購入・発注したいもの
- 見積金額
- その経費を使って行いたい取組
- 現在の事業・顧客・課題
- 新たに獲得したい顧客
をもとに、対象となり得る経費区分や、申請前に確認したい条件を整理できます。
参考にした公式資料
本記事は2026年10月10日時点で公表されている第20回公募要領を基にしています。 採択後の実績報告書類や経費管理の具体的な様式については、第20回の補助事業の手引き等が公表された後、最新版をご確認ください。