東京都の令和8年度「年収の壁突破」総合対策促進奨励金は、従業員の就業調整を防ぐため、手当制度を新設・見直しする都内中小企業向けの制度です。
社会保険料に関する手当の新設で30万円、配偶者手当の見直しで30万円、両方に取り組む場合は50万円が交付されます。
2026年11月8日現在、第7回の申請を受付中で、申請期限は2026年11月30日(月)17時です。
ただし、手当を設けるだけでは交付されません。交付決定後に労使協定の締結、就業規則の改正、社内研修などを所定の順序で実施する必要があります。
年収の壁突破奨励金はいくら?30万円・50万円の条件
令和8年度「年収の壁突破」総合対策促進奨励金には、2つのコースがあります。
| 取組内容 | 奨励金額 |
|---|---|
| 社会保険加入促進コースのみ | 30万円 |
| 配偶者手当見直しコースのみ | 30万円 |
| 両コースを実施 | 50万円 |
2コースを実施しても30万円+30万円=60万円にはならず、合計50万円です。
奨励金は従業員個人ではなく、所定の制度整備を行った事業主に交付されます。
対象となる事業者の条件
対象は、東京都内で事業を営む中小企業事業主です。個人事業主も含まれます。
主な共通要件は以下のとおりです。
- 都内に本店または事業所があり、実際に事業を営んでいる
- 都内勤務の雇用保険被保険者を1名以上、6か月以上継続雇用している
- 交付申請日までに就業規則を作成し、労働基準監督署へ届け出ている
- 都税の未納がない
- 労働関係法令・社会保険関係法令を遵守している
- 過去に同一コースの奨励金を受給していない(受給予定を含む)
従業員10人未満の事業者も、申請前に就業規則の届出が必要です。通常の労働基準法上の届出義務とは別に、本奨励金独自の申請要件として定められています。
このほか、過去5年間の重大な法令違反や不正受給歴などに関する要件もあります。
社会保険加入促進コース|手当の新設で30万円
社会保険加入促進コースは、新たに社会保険の加入対象となる非正規雇用者に対し、本人が負担する社会保険料に関する手当を新設する取組です。
対象となる条件
- 就業規則に対象となる社会保険料関連手当の規定がない
- 新たに社会保険の加入対象となる可能性がある非正規雇用者がいる、または取組期間中に雇い入れる予定がある
- 社会保険未加入者1名以上が新たに加入し、手当の受給対象となる計画を作成する
対象となる非正規雇用者は、原則として取組期間終了日から6か月以内に社会保険へ加入することが求められます。
新設する手当の注意点
新設する手当には、毎月の支給額または社会保険料に対する支給割合などを明記します。
例えば、社会保険加入促進手当として月額一定額を支給する制度や、本人負担の社会保険料に応じた金額を毎月支給する制度が考えられます。
ただし、支給期間を1年間に限定した手当や、半年に1回だけ支給する手当は対象になりません。月額の支給条件を明確にした継続的な制度として整備する必要があります。
配偶者手当見直しコース|制度の見直しで30万円
配偶者手当見直しコースは、配偶者の収入に上限を設けて支給している配偶者手当・家族手当を見直す取組です。
対象となる条件
- 就業規則に配偶者の収入要件がある配偶者手当の規定が存在する
- 原則として交付申請日から過去5年以内に対象手当の支給実績がある
- 支給実績のある日以降、該当する規定を削除していない
対象になるのは、次のいずれかの見直しです。
| 見直し方法 | 内容 |
|---|---|
| 収入要件の撤廃 | 配偶者の収入による支給制限をなくす |
| 他の手当への振替 | 配偶者手当を廃止し、別の手当に振り替える |
| 基本給への繰入れ | 配偶者手当を廃止し、基本給に繰り入れる |
単純に配偶者手当を廃止するだけでは対象外です。また、収入要件を引き上げるだけで制限を残す方法も、対象となる見直しには該当しません。
2026年第7回の申請期限は11月30日17時
令和8年度の募集は全10回で、各回の受付社数は130社です。
2026年11月8日時点の直近の申請スケジュールは次のとおりです。
| 募集回 | 受付期間 | 受付社数 |
|---|---|---|
| 第7回 | 2026年11月1日~11月30日17時 | 130社 |
| 第8回 | 2026年12月1日~12月31日17時 | 130社 |
| 第9回 | 2027年1月1日~1月31日17時 | 130社 |
| 第10回 | 2027年2月1日~2月28日17時 | 130社 |
申請方法は電子申請(Jグランツ)または郵送です。電子申請にはGビズIDが必要で、郵送は締切日当日の消印有効です。
※募集状況や受付条件は、申請前に最新の公式案内を確認してください。
申請から奨励金受給までの手順
本奨励金では、交付決定後に取組を実施することと、手続きの順番を守ることが求められます。
- 申請するコースを決め、対象要件と既存の就業規則を確認する
- Jグランツまたは郵送で交付申請する
- 審査を経て交付決定を受ける
- 就業規則の改正案を検討・相談する
- 使用者と労働者代表との間で労使協定を締結する
- 就業規則を改正し、労働基準監督署へ届け出る
- 全従業員への周知と社内研修を実施する
- 実績報告を提出し、額の確定後に請求手続きを行う
制度整備の取組期間は交付決定日から3か月以内、実績報告の期限は交付決定日から4か月以内です。
専門家への個別相談が2回必要
取組期間中には、事業で指定された専門家による無料の個別相談を合計2回利用する必要があります。
- 1回目:交付決定日から1か月以内
- 2回目:交付決定日から3か月以内
- 相談方法:オンライン(Zoom)
2コースに取り組む場合でも、個別相談は合計2回、社内研修は1回です。
労使協定の締結より先に就業規則を改正すると、奨励金の対象外となります。交付決定後は、公式の手続きの流れに従い、取組日付を確認しながら進めてください。
申請前によくある質問
個人事業主でも30万円を受け取れますか?
個人事業主も対象ですが、東京都内の事業所、雇用保険被保険者の雇用実績、就業規則の届出などの要件を満たす必要があります。事業主1人だけでは、必要な雇用要件を満たしません。
既に社会保険に加入しているパート従業員も対象ですか?
社会保険加入促進コースでは、交付申請日以降に新たに社会保険の加入対象となる非正規雇用者が必要です。交付申請前から加入要件を満たしていた従業員の遡及適用は対象になりません。
配偶者手当を廃止するだけで30万円もらえますか?
単なる廃止は対象外です。収入要件の撤廃、他の手当への振替、基本給への繰入れのいずれかを実施する必要があります。
まとめ|既存の手当制度と就業規則を先に確認
東京都の「年収の壁突破」総合対策促進奨励金は、社会保険料関連手当の新設または配偶者手当の見直しで30万円、両方に取り組む場合は50万円が交付される制度です。
令和8年度第7回の申請締切は2026年11月30日17時です。
申請を検討する企業は、まず既存の就業規則、対象となる従業員、配偶者手当の支給実績を確認しましょう。交付決定後の制度改正だけでなく、労使協定、専門家相談、研修、実績報告まで計画する必要があります。
参考:東京しごと財団 令和8年度「年収の壁突破」総合対策促進奨励金/公式特設サイト・申請案内/令和8年度募集要項(申請の手引き)。2026年11月8日確認。