パソコン購入に使える補助金・助成金はあります。個人事業主・フリーランスも候補を探せますが、所在地、従業員の有無、PCの使い道によって、利用できる制度が変わります。
会計ソフトと合わせて申請するインボイス枠に加え、従業員のテレワーク環境を整える助成金、賃上げと業務改善を支援する助成金、自治体独自のデジタル化支援などを確認します。
ただし、どれも同じ条件でPCを買えるわけではありません。この記事では、制度の概要よりも、誰が使うPCなのか、買い替えか新規導入か、ソフトも導入するのかという実際の購入場面から、制度を選ぶポイントを整理します。
個人事業主・法人がパソコン購入に使える補助金・助成金を比較
| 購入の目的・状況 | 候補となる制度 | 最初に確認する条件 |
|---|---|---|
| 会計・請求等のソフトとPCを導入したい | デジタル化・AI導入補助金のインボイス枠 | 対象ソフトと合わせた申請が必要。PCだけでは申請できない。 |
| 従業員の在宅勤務用PCをそろえたい | テレワーク関連の助成金 例:東京都テレワークトータルサポート助成金 |
所在地・雇用人数・PCの利用者・テレワーク実績。東京都の制度は全国共通ではない。 |
| 賃上げと、PCを使った業務改善を進めたい | 業務改善助成金 | 賃金・雇用・申請期限の条件に加え、PCが対象になる例外・特例に該当するか。 |
| 労働時間短縮や休暇制度の整備も進めたい | 働き方改革推進支援助成金 | 対象コースの要件と改善計画。汎用PCは原則対象外で、対象となる例外を確認する。 |
| 所在地の制度も含めて探したい | 自治体独自のデジタル化・DX支援 | PCが対象経費に含まれるか、ソフト導入が必要か、購入前・購入後のどちらに申請するか。 |
従業員がいない個人事業主・フリーランスの場合
自分が事業で使うPCを探しているなら、対象ソフトの導入を伴うインボイス枠と、所在地の自治体制度を確認します。業務改善助成金や、ここで紹介する東京都のテレワーク助成金には雇用要件があり、従業員のいない事業者には合いません。
法人・従業員を雇用している個人事業主の場合
PCを使う人と場所、テレワークや賃上げの予定から候補を絞ります。代表者用に1台購入する場合と、従業員10人に在宅勤務用PCを配る場合では、確認すべき制度が変わります。法人かどうかだけでは決まりません。
IT導入補助金でのパソコン購入は、対象ソフトとの導入が前提
2026年度の制度名は「デジタル化・AI導入補助金」です。旧IT導入補助金のインボイス枠でPC購入を考えている方は、2026年度のインボイス枠(インボイス対応類型)を確認します。会計・受発注・決済などの対象ソフトを導入する場合に候補になり、個人事業主も事業者の要件を満たせば検討できます。
この枠のPCは、今回導入する対象ソフトを継続して利用するための機器という位置付けです。PCだけの申請はできず、PC等の補助率は2分の1以内、補助上限は10万円です。
PCは、ソフトを購入するIT導入支援事業者(同じコンソーシアムの構成員を含む)から購入します。希望する機種を取り扱えるか、申請前に確認しておきましょう。
「PCが欲しい」が相談のきっかけでも構いません。そこから、帳簿入力を減らしたい、請求書と会計の転記をなくしたいなど、実際に改善したい業務とソフトを選んでいきます。契約したソフトを業務で使うことに加え、製品・契約・購入方法の条件も満たす必要があります。
すでに会計ソフトを使っていても、乗り換えを一律に諦める必要はない
今のソフトを使い続けるためにPCだけを交換する費用は、対象外です。一方で、別の対象ソフトを新たに導入し、その利用に資するPCも購入する計画なら、導入内容を確認する余地があります。既存ソフトの追加ライセンスや単なるバージョンアップ等とは分けて考えます。
確認したインボイス枠のPC関連の条項には、「現在のPCが故障していること」「新しいソフトが現在のPCでは動かないこと」を必須とする記載はありません。実際の課題、乗り換える理由、導入後の使い方を整理して検討します。
会計ソフトとMacBook・デスクトップを申請した経験
私がこれまで支援した、会計ソフトとPCを組み合わせた該当案件では、MacBookや、比較的性能の高いデスクトップPCを含め、いずれも採択されています。
機種名だけで選択肢から外す必要はないと考えていますが、これは私が取り扱った案件の経験です。今後の採択や、個別のPC経費が最終的に認められることを保証するものではありません。
従業員の在宅勤務用なら、テレワーク関連の助成金を確認する
会計ソフトの乗り換えを予定していなくても、従業員のテレワーク環境を整えるなら、別の制度が候補になります。
例えば、東京都の2026年度の制度は「テレワークトータルサポート助成金」です。対象となる従業員がテレワークで使うノートPC・デスクトップPCの購入費を申請できます。インボイス対応ソフトとの同時購入が必須という制度ではありません。
- 都内勤務の常時雇用労働者が2人以上いるなど、事業者の要件を満たす
- 申請前に、東京都が実施するテレワーク相談窓口を利用する
- テレワーク規定などを整備し、対象者が実際にその環境を使って働く
- 対象者全員が、支給決定から4か月以内に、整備した環境で6回以上テレワークを実施する
全事業所の常時雇用労働者数は999人以下。都内勤務の2人以上のうち、少なくとも1人は、申請時点で継続雇用・雇用保険加入がそれぞれ6か月以上などの条件があります。
ここで重要なのは、代表者自身のPC購入や、会社内で使うPCの交換とは区別することです。代表者本人はテレワーク実施対象者にできず、リモート接続先として会社内に置くホストPCも対象外です。
PC1台につき助成対象経費にできるのは、税抜10万円までです。そこに助成率を掛けるため、「1台につき10万円が支給される」という意味ではありません。具体的な計算の違いは、後半で比較します。
東京都は、相談窓口の申込期限が先に来ます
助成金の申請受付は2027年2月5日までですが、事前に利用が必要な相談窓口の申込期限は2026年11月30日17時です。PC選びと並行して、事前相談を進める必要があります。
国のテレワーク助成金とは、仕組みが違う
国の「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」は、2026年度は制度導入・目標達成に対する定額助成です。PC購入額に一定の率を掛ける東京都の制度とは、支給の仕組みが異なります。
「テレワーク助成金」という名前だけで判断せず、実施主体と年度を確認しましょう。過年度のPC購入・レンタル条件を、そのまま現在の制度に当てはめないことが大切です。
業務改善助成金は、PC購入の前に賃上げ・雇用・期限を確認する
業務改善助成金は、従業員の賃上げと、生産性向上・労働能率の改善に役立つ設備投資等を組み合わせる制度です。従業員を雇用していない個人事業主や一人会社は対象になりません。
PCの機種や価格を調べる前に、まず次の条件を確認します。
- 事業場内最低賃金が、その地域の2026年度改定後の最低賃金を下回っている
- 最低賃金の基準となる労働者が、雇入れ後6か月を経過し、申請時点で雇用保険に加入している
- 事業場内最低賃金を50円以上引き上げるなど、申請コースの条件を満たす
- 所在地の申請期限に間に合い、定められた期間内に賃上げを行える
雇用保険の加入期間自体が6か月以上という意味ではありません。また、現在適用されている最低賃金は満たしている必要があります。
PCは原則として対象外ですが、次の例外・特例に当てはまる場合は、購入費が対象になることがあります。
特定業務専用のシステムを動かすために導入する場合
POSシステムや会計給与システムなど、特定業務専用のシステムを稼働させるために導入することが明らかなPCには、対象となる例外があります。
この場合は、どの作業をどう改善するのか、そのシステムとPCがなぜ必要なのかを具体化します。単に「新しいPCなら仕事が速くなる」と説明するより、現在の入力・集計・転記などの作業と、導入後の変化を整理するのが実務上の出発点です。
物価高騰等要件の特例で、PCを新規導入する場合
原材料費の高騰などの外的要因により、最近6か月間平均の売上高総利益率または売上高営業利益率が前年同期より3%ポイント以上低下しているなど、所定の物価高騰等要件に該当すると、PC等の新規購入が対象になり得ます。
特例事業者には賃金要件と物価高騰等要件がありますが、賃金要件(事業場内最低賃金1,050円未満)だけでは、このPC等の対象経費拡大は利用できません。 先ほどの専用システム用PCの例外とは、別の扱いです。
ただし、この特例では既存PC等の入れ替えは対象外です。「新品を買う」という意味での新規購入と混同せず、買い替えなのか、新たに導入する設備なのかを確認します。
また、補助額だけでなく、賃上げ後に続く人件費も含めて考えます。もともと予定していた賃上げと業務改善に合うかを確認し、PCの値引き額だけで判断しないことが大切です。
2026年度は、所在地によって申請期限が異なります
申請期限は、地域別最低賃金の発効日前日と2026年11月30日の早い方です。東京都・大阪府は9月30日が期限で、この記事の確認日には新規申請期限を過ぎています。
賃上げは、申請後から地域別最低賃金の発効日前日までに行います。設備の契約・購入は交付決定後です。申請・賃上げ・設備購入の期限と順序を、それぞれ確認してください。
労働時間短縮も進めるなら、働き方改革推進支援助成金を確認する
従業員の労働時間短縮や休暇制度の整備も進める場合は、働き方改革推進支援助成金の「労働時間短縮・年休促進支援コース」も確認する候補です。
このコースでも汎用PCは原則対象外ですが、POS・会計給与などの特定業務専用システムを稼働させる目的が明らかな導入には例外があります。別途、長時間労働恒常化特例によってPC購入費が対象になる場合もあります。
PCの購入希望に加え、現在の36協定や労働時間、休暇制度を確認して判断します。誰でもPCを買い替えられる制度ではありません。2026年度の公表申請期限は11月30日17時で、予算による早期終了があります。
自治体の制度も確認する。PCの条件は国の制度と同じではない
都道府県・市区町村のデジタル化支援にも、PC購入が対象になる制度があります。従業員のいない個人事業主は、インボイス枠に加えて、所在地の制度も確認する価値があります。
例えば、2026年度には次のような違いがあります。
- 出雲市のデジタル化促進支援
新たな有料ソフト・システムの稼働にPCが必要不可欠な場合に対象となり得ます。既存PCのスペックでは対応できない場合などが例示されており、PCだけの購入や単なる買い替えは対象外です。 - 宮津市の事業者DX対応支援
生産性向上に役立つ新たなシステムの導入に合わせ、そのシステムで使うPCが対象になる場合があります。こちらは、事業実施後に申請する方式です。
どちらも対象地域内の事業者向けで、全国で利用できる制度ではありません。公表受付期限は、出雲市が2026年10月30日、宮津市が2027年1月29日です。宮津市は事業完了後30日以内という期限もあり、いずれも予算状況等の確認が必要です。
このように、ある制度で認められたPCの買い方が、別の制度でも認められるとは限りません。 対象ソフト、既存PCとの関係、購入先、申請の順序を制度ごとに確認します。
MacBook・デスクトップ・高性能PCは、どこまで選べる?
「MacBookだから不可」「デスクトップだから不可」と、名称だけで判断するものではありません。選んだ制度で認められる用途と、そのPCの構成を照らし合わせます。
MacBookを選ぶ場合は、導入するソフトがmacOSや利用予定のブラウザに対応しているかも確認します。同じシリーズでもメモリやストレージの構成で価格が変わるため、具体的な仕様と見積もりで比較します。
例えばインボイス枠では、導入するソフトに対して著しく高スペックな製品を対象外とする規定があります。私自身も、会計ソフトを使うためのPCとして、非常に高性能なGPUと128GBのメモリを備えた構成を希望されたら、用途と必要性を慎重に確認します。
128GBやGPU搭載自体が、一律の禁止基準という意味ではありません。 会計ソフトを稼働させるのに、その構成がどの程度必要なのかという問題です。
一方、業務改善助成金には、業務用高機能プリンターを動かすために必要な仕様のPCで、汎用PCでは対応できない場合を対象とし得る説明もあります。高性能PCが必要な業務なら、その必要性と制度上の扱いを確認します。
そのため、相談時には機種名だけでなく、CPU・メモリ・ストレージ・GPU・価格が分かる構成をそろえておくと話が早くなります。先に高額な構成を決め切るより、使える制度と実際の用途を確認してから絞るほうが進めやすくなります。
「上限10万円」でも、受け取れる金額は同じではない
PC関連の制度では、「補助金の上限」と「補助率を掛ける前の対象経費の上限」を取り違えないようにします。
| 制度 | PC部分の計算の考え方 |
|---|---|
| インボイス枠 | 認められたPC費用の2分の1以内で、補助額の上限が10万円。対象ソフトと合わせた申請が必要。 |
| 東京都テレワークトータルサポート助成金 | PC1台の対象経費は税抜10万円まで。その金額に、常時雇用2〜29人なら3分の2、30〜999人なら2分の1の助成率を掛ける。 |
税抜30万円のPCがインボイス枠で全額対象経費として認められる場合、PC部分の補助額は上限10万円です。同じ価格のPCでも、東京都のテレワーク助成では対象経費を10万円までとして計算します。実際の助成額は、事業全体の上限や端数処理等も含めて確定します。
比較するときは、PC本体だけでなく、ソフト利用料、設定費、サポート費、申請支援料、制度利用に伴う継続的な費用まで含めて確認します。補助金を使う場合と、必要なものを通常購入する場合の総額を並べて考えましょう。
PCだけの購入や、購入済みの場合はどう考える?
会計ソフトを新しく契約しないと、PCの補助は受けられない?
インボイス枠では対象ソフトとの導入が必要ですが、すべての制度で会計ソフトの新規契約が必須というわけではありません。例えば東京都のテレワーク助成は、従業員のテレワーク環境整備という目的から検討します。
ただし、ソフトとのセットが不要でも、所在地・雇用・勤務実績など別の条件があります。希望するPCだけを自由に買えるという意味ではありません。
小規模事業者持続化補助金では買えない?
第20回の一般型・通常枠では、パソコン、タブレット、PC周辺機器などは対象外経費に明記されています。販路開拓やホームページ運用に使う予定でも、PC購入の候補にはしません。
先にPCを買ってから申請してもよい?
購入前に、制度ごとの順序を確認してください。インボイス枠、東京都のテレワーク助成、業務改善助成金は、決定前に発注・契約・購入等を進めないことが重要です。
一方、宮津市の例のように、実施後に申請する自治体制度もあります。「購入前に申請が必要か」を、注文する前に確認することを共通の手順にしておくと判断しやすくなります。
希望するPCと事業の状況から、使える制度を整理します
「MacBookが欲しい」「従業員用に数台そろえたい」「今のPCを買い替えたい」という段階で、まず候補を整理できます。ご相談の際は、分かる範囲で次の情報をお知らせください。
- 事業所の都道府県・市区町村
- 個人事業主・法人の別と、従業員数
- 希望するPCの構成・価格・台数
- PCを使う人・場所・業務と、買い替えか追加導入か
- 現在のソフトと、新たなソフト導入の予定
- テレワーク導入や賃上げの予定、購入希望時期
制度を決めてからPCを当てはめるのではなく、実際の使い方と事業の状況をもとに、対象となる制度・必要な手続き・自己負担を確認します。
参考資料・確認日
2026年10月10日時点の公式資料を確認しています。申請時には、対象年度・公募回の最新版と受付状況をご確認ください。支援経験と機種選びの見解は、公式の審査基準とは区別しています。
- デジタル化・AI導入補助金2026:インボイス枠・第7次以降の公募要領、ITツール登録要領
- 東京都テレワークトータルサポート助成金:2026年度公式案内、募集要項、FAQ
- 業務改善助成金:2026年度交付要領、Q&A、地域別最低賃金・発効日一覧
- 働き方改革推進支援助成金:労働時間短縮・年休促進支援コース、2026年度支給要領
- 人材確保等支援助成金・テレワークコース
- 自治体の制度例:出雲市デジタル化促進支援、宮津市事業者DX対応支援
- 小規模事業者持続化補助金・一般型通常枠 第20回公募要領